人事評価・社内評価基準で英語能力を要件の一つとしている企業では、今まで、国内普及率の高いTOEICテストスコアの活用が一般的でした。
しかし、グローバル事業展開を行う外資系企業や大手企業を中心にTOEICから「CEFR」へと移行する動きが徐々に広まっています。
<この記事でわかること>
・グローバル企業が注目する「CEFR」とは?
・CEFRとTOEICスコアの相関性
・人事評価の英語力判断基準をTOEICスコアからCEFRにシフトするメリット
・CEFRを導入している企業
CEFRとは
CEFR(セファール)とは、英語などの外国語の習熟度や運用能力を同一の基準で測定する国際標準の指標のことです。
「読む・書く・聞く・話す」の4技能を正確に評価し、A1~C2レベルの6段階に分類します。A1が入門基礎の初級者レベル、C2が最難関の熟練者レベルであることを表しています。
CEFRというのは略称で、“Common European Framework of Reference for Languages”(ヨーロッパ言語共通参照枠)が正式名称です。
発祥地のヨーロッパ圏を中心に世界各国で広く認知・活用が進んでいます。
CEFRが定める英語力ランク
段階 | CEFR | 能力レベル別に「何ができるか」を示した熟達度一覧 |
---|---|---|
熟達した言語使用者 | C2 | 聞いたり読んだりした、ほぼ全てのものを容易に理解することができる。いろいろな話し言葉や書き言葉から得た情報をまとめ、根拠も論点も一貫した方法で再構築できる。自然に、流暢かつ正確に自己表現ができる。 |
熟達した言語使用者 | C1 | いろいろな種類の高度な内容のかなり長い文章を理解して、含意を把握できる。言葉を探しているという印象を与えずに、流暢に、また自然に自己表現ができる。社会生活を営むため、また学問上や職業上の目的で、言葉を柔軟かつ効果的に用いることができる。複雑な話題について明確で、しっかりとした構成の詳細な文章を作ることができる。 |
自立した言語使用者 | B2 | 自分の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的な話題でも具体的な話題でも、複雑な文章の主要な内容を理解できる。母語話者とはお互いに緊張しないで普通にやり取りができるくらい流暢かつ自然である。幅広い話題について、明確で詳細な文章を作ることができる。 |
自立した言語使用者 | B1 | 仕事、学校、娯楽などで普段出会うような身近な話題について、標準的な話し方であれば、主要な点を理解できる。その言葉が話されている地域にいるときに起こりそうな、たいていの事態に対処することができる。身近な話題や個人的に関心のある話題について、筋の通った簡単な文章を作ることができる。 |
基礎段階の言語使用者 | A2 | ごく基本的な個人情報や家族情報、買い物、地元の地理、仕事など、直接的関係がある領域に関しては、文やよく使われる表現が理解できる。簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄について、単純で直接的な情報交換に応じることができる。 |
基礎段階の言語使用者 | A1 | 具体的な欲求を満足させるための、よく使われる日常的表現と基本的な言い回しは理解し、用いることができる。自分や他人を紹介することができ、住んでいるところや、誰と知り合いであるか、持ち物などの個人的情報について、質問をしたり、答えたりすることができる。もし、相手がゆっくり、はっきりと話して、助けが得られるならば、簡単なやり取りをすることができる。 |
CEFRとTOEICテストスコアの換算表
CEFRレベル | TOEIC L&R Listening | TOEIC L&R Reading |
---|---|---|
C2 | 該当なし | 該当なし |
C1 | 490点~ | 455点~ |
B2 | 400点~ | 385点~ |
B1 | 275点~ | 275点~ |
A2 | 110点~ | 110点~ |
A1 | 60点~ | 60点~ |
CEFRを人事評価・社内評価制度に導入するメリット
CEFRは汎用性が高く、TOEICや英検など異なるテスト評価を統一化できる
社会人が受験する代表的な英語資格検定試験に、まずTOEIC(TOEIC L&Rテスト、TOEIC S&Wテスト)の名前が挙がるかと思います。
他にも英検やTOEFL(TOEFL iBT)、IELTS、以下は少しニッチな試験になりますが、CASEC、GTEC、ケンブリッジ英検、日商ビジネス英語検定など様々な種類があります。
計測対象の技能や出題テーマ、試験時間などの条件がそれぞれ異なるため、スコアやテスト結果の情報だけで難易度を比較することは不可能でした。
しかし、TOEICをはじめとする大半の英語資格検定試験がCEFRに準じており、他の試験との対照表を運営団体側が公表しています。
このように、国際基準であるCEFRの汎用性は高く、CEFRをベースに英語能力の評価を統一できるメリットがあります。
正確な4技能測定によりグローバル人材の育成や採用、人事配置の精度が上がる
CEFRをもとに4技能の英語能力を正確に計測し、人事が把握できるようになることで、グローバル部門のポジショニングに有望な人材の効果的な育成や新卒・中途の新たな即戦力採用など、人事業務全体の精度向上につながります。
CEFRをベースに社内英語研修を改善できる
社内英語研修にもCEFRを取り入れることで、社員個々人の現状レベルや課題を的確に把握したり、最適で細やかな学習目標を設定できたり、従来よりも正しい成果評価を行うことができます。
英語研修制度を見直すきっかけにもなり、費用対効果の改善に期待できます。
社員の自己啓発、学習意欲向上につながる
CEFRによって自分の英語レベルや課題点が客観的にわかるようになるため、どの技能を重点的に伸ばすべきか、自己学習の計画が立てやすく、モチベーションを維持しながら目標達成を目指すことができます。
CEFRを導入するという新たな試み自体が、新鮮な学習意欲を取り戻す良い機会になるかもしれません。
CEFRを人事評価・社内評価制度に導入している企業
株式会社レアジョブの法人向け事業子会社である株式会社プロゴスは、グローバル人材育成に取り組む企業101社(回答企業の82%が売上規模1,000億円以上の大企業)を対象にCEFRの導入状況調査を行いました。
レアジョブの調査結果によると、過去3年以内にCEFRを導入した企業が65%に達していることが明らかになりました。
参照:レアジョブ社「人事評価基準が変わる、人的資本経営の時代にCEFR導入が急増 TOEIC®L&RからCEFRへ、研修から人事評価まで幅広い活用が進む」
今後より一層、TOEICテストよりもグローバルなビジネスシーンで通用性が高いCEFRを重視する傾向が強まっていくのではないでしょうか。